ルーティと喧嘩した。
他愛もない理由で。
いつものこと。そういつものことだった。
いつも、どうでもいいことで喧嘩して、何となく普段通りに戻って。

なのに、あの日は違っていた。
僕ら自身ではなく、あいつの様子が。

ひどく必死な顔で止めに入られた。
泣きそうな表情で。

「家族は、大事にしなきゃだめだよ…」

搾り出したような、掠れた声。
何となく感じた違和感。

あの時気付いていたなら、こんなにも後悔することはなかっただろうか。










その後
〜The ending that only the world was saved.〜










翌日、あいつはウィダーシンを倒しにギルガリムの元へ向かった。
誰にも、何も告げずに。
何となく街の外へ散歩にでも行くように、ギルガリムの中へと入って行った。

わかっていたんだ。もう一時の猶予も許されていないことに。
呼吸をするように、この世界の危うさを肌で感じたのだ。
だからすぐに向かった。たった一人で。
どうせ、今までのどの戦いよりも危険だから、巻き込みたくなかった。なんて理由だろう。


気付いた時には、全て終わっていた。
世界にはマナが溢れ、失われた街も元通りになった。

ただ一つだけを、除いては。

喜びに満ちた街に戻って来たのは、モルモとカノンノだけ。
嬉しそうな、悲しそうな表情で。
そして告げた。

あいつは、世界を取り戻したと同時に、世界樹へ取り込まれたと。





ふざけるな。ふざけるな。そんなことがあってたまるか。
あれだけ苦労しておいて、取り戻した世界を見ることもなく。

すぐにドープルーンを飛び出した。
ウッドロウの許可など知ったことか。
向かったのはアイリリー。世界樹の麓。
奥へ。奥へ。阻む魔物など、片っ端から切り捨てて。

そして辿り着いたのは、あいつが目覚めたと聞かされた場所。世界樹の麓の最深部。
マナの濃さなんて殆どわからないが、ここが神聖な場所なのだということは感じ取れた。
魔物達も、ここには一匹も入ってこない。
目の前には、巨大な世界樹の根。
根といっても、その一本は普通の木よりも大きい。
見た途端に、感情が爆発した。

こいつが、こいつが奪った。世界から、あいつを。

「っ……！」
根に爪を立てる。勿論傷付く筈もないが。
「…何故…何故こんなに早くあいつを取り込んだ！世界を取り戻したのに、それを見せてやることもしないというのか！」
吼えるように叫ぶ。感情が抑えられなかった。
「返せ！あいつを！あいつがどれだけの思いをしてお前の世界を取り戻したと思っている！あいつは…あいつはお前の道具の一つじゃない！生きているんだぞ！」
拳を作って根を殴る。渾身の力を込めて。
瞬間、体が跳ね飛んだ。気付いた時には背中に強い衝撃。
弾かれた。とてつもない力で。
この樹は世界の創造主。それに作られた一部である人間など、塵と同じなのだ。この樹にとっては。
十分に回復していない状態だから助かった。これが完全だったなら、きっと今頃体中のマナを吸い取られていただろう。

それでも、関係なかった。体の痛みも、目の前の樹が世界の全てだということも。
起き上がり、再び根に掴みかかる。薄皮一枚も剥がれはしない。
「返せ…返せ…！」
息を大きく吸い込み、叫ぶ。この中いる、マナとして取り込まれたあいつに聞こえるように。

「っ……戻って来い！！ロード！！！」



世界が見たいと言った。
呑み込まれてしまった他の街も森も、すべてを見たいと。
笑って言った。だから戦うのだと。
泣きそうな笑顔で言った。戦うしかないのだと。

『リオンの故郷も見てみたいな』
『フン。それよりもまず力をつけることを考えたらどうだ』
『えへへ。そうだね』

いつかの記憶が頭をよぎる。
天気が良かった日、街の外れの丘で、二人。

『一緒に行こうよ。ルーティと三人で、二人の故郷の町に』
その笑顔は、戦いを終えた後の未来を思い描いていた。

「お前から誘ったくせに、約束を破るのか？そんな奴だとは思わなかったな」

世界は元通りになった。ウィダーシンが現れる前の姿に。
そう、元通り。あいつも、いない。

「心外だと思うなら文句でも言ってみろ…。…早くしないと、置いて行くぞ…」

声が震える。あいつに届くように、大きな声で言いたいのに。

「…くっ…………」

視界が歪む。目の奥が痛い。頬を何かが伝う。

その日、人生で二度目の、大切なものを失った涙を流した。




















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後書き

マイソロED後妄想文。
終わっても生き残る(?)ハッピーエンドか、皆に別れを告げて世界樹へ還るか、 世界だけが救われるある意味のバッドエンドか。
美織の中でのED後は基本この3パターンかと。今回はバッドエンド。
坊ちゃんごめんよ。泣かせてごめんよ。
そしてリオンの台詞一回だけでしか名前を出さなかったのはさりげなく仕様。

英文の意味は「世界だけが救われた結末」
けど翻訳ソフトで変換したのできっとおかしい。

ふと疑問なのですが、呑み込まれた大地は戻るとして、人間とかは戻るんでしょうか？
戻らなかったとしたら、また世界樹が少しだけ人間を創るのかな？
あの3つの街にいる人間だけじゃ少なすぎるでしょうから。
そしていつも言っている通り美織はまだ公式EDは見てませんから！

では、ここまで読んでくださってありがとうございました。

07.11.3